蛇の路
 私は床に塩を零した 塩は良くないものを清めてくれる、と よく聞くので 丁度良いかと放置した とてもよく知っている女性に会った 何故か名前は思い出せない 彼女は、とても楽であろう道を選んで その方へ歩みを進める そっちは蛇の路だ、絶対に駄目だ 名前も分からない彼女ではあるものの 言葉を伝えにくい私に、引き止める力などあるのか 考える前に、たどたどしくそれでも叫んだ 何も伝わらなかった 彼女はぬるま湯に浸かる様に、気持ちよさ気な笑みを浮かべる 私の背中は凍りつく こんなのは嫌だ 私は自分の路を行く 蛇の路に、彼女は今でも 心地よい笑みを浮かべているのだろうか 振り返り、彼女を見る勇気は 私には無い