あの世というものがあるならば

 私は山奥の露天風呂の様な場所にいたと思う


先客は、とても怖そうな方々

湯に浸かって、何かを叫んでいる様だ


私は、この場を治めてくれる所へ電話をかけた


彼らは直ぐに来てくれた、のだが、

見ているだけだ


それもその筈だ


先客の方々の口は動いているのだが、何も言ってはいない

何も迷惑も起きていない


どういう事だろう


怒りに満ちた先客は

身体に刺してある柄に姿を変えていった


鬼だ


両側に天を羨む様に曲げて伸びた角

とても立派で思わず見惚れた


ああ、ここはあの世の底だ


よく、悪い事をすると閻魔様に舌を抜かれる、と

子供の頃から聞いてきたが


閻魔様も舌がないのか


ただ、私は閻魔様からお土産をもらってきた


自分が悪い事をしていないのならば

相手の舌を抜くつもりで戦え、と


そうか、

閻魔様も不条理な事に怒っているんだ


自分の犯した過ちを、誰かが二度と起こさぬ様、

ちゃんと見ているんだ




言葉がなくても伝わるものがある


そんな心地よい感覚を教えてくれた


感謝だ






コメント

このブログの人気の投稿